任意売却物語

さまざまな任売の体験談を集めました。

3代に渡って続いてきた造り酒屋のご主人であるEさんは悩んでいました。このところ大口だった客が2件も減り、毎月従業員に給料を支払うと、後は家族で食べていくのがやっとと言う状況が慢性化していたのです。そこへ銀行からの督促状が届きました。なんとすでに銀行の蓄えも底をつき、このままではいつ倒産してもおかしくないと言うところまで事態が悪化していたのです。これまで奥さんにははっきりとは事情を話していなかったEさんですが、さすがにこれにはこたえ奥さんに苦境を打ち明けました。「私の叔父に相談して見る。親戚では一番頼りがいのある人だから」と言うのが奥さんの返事でした。10日ほどして奥さんの叔父に当る方がEさんのところを訪ねて来ました。見れば財力もある上に大変気さくでしかも思慮深そうな人です。Eさんは思わず「何とかお願いします」と深々と頭を下げていました。

それから約2ヶ月経った頃連絡が入り、執行官の調査が入ることになりました。こうなると競売か任意売却か決断を急がなければなりません。そしてその直後でした、奥さんの叔父から連絡が入ったのです。「お宅の造り酒屋はたいした文化財だ。私が買取ります」と。早速専門の業者に相談して任意売却の相談とともに奥さんの叔父が買取る可能性があること、必要となる書類や任意売却後の返済についてはどうなるのかなど時間をかけて確認するようにEさんと奥さんは聞いてはメモを取っていました。

すべてが落ち着いた今、Eさんは競売などで見知らぬ人の手に渡ること無く任意売却ができた造り酒屋の外観を見ながら、「まるで初めてこの建物を見るようだ」と感じていました。